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2020.04.13

【ニュース】徳重道朗(現代美術作家)と富山大学芸術文化学部の学生による協働リサーチ&展覧会「地域/私のヴァナキュラーをめぐる旅」の延期と成果報告会/担当教員:松田 愛(芸術文化学部講師)

【1】2020年3月6日にプロジェクト「地域/私のヴァナキュラーをめぐる旅」の成果報告会を開催。11名の学生達がそれぞれの担当会場で準備を進めていた展示の内容について説明しました。スライドは、酒店を改装してできた南町四区公民館(南幸町)での展示準備の風景。(新型コロナウイルスへの対応により、距離を置いて着席しています。)

1.展覧会と特別公開フォーラムの延期について
「地域/私のヴァナキュラーをめぐる旅」は、高岡市との連携事業「高岡元気発信プロジェクト」のアート編企画として、現代美術作家の徳重道朗さんと芸術文化学部の学生・大学院生11名が、2019年6月より協働して進めてきたリサーチ&展示プロジェクトです。「今まで等閑視されてきた『普通の人々』や『日常の場所』が隠し持つ文化的な力の所在を表す*」とされる「ヴァナキュラー」という概念を手掛かりに、高岡に潜在する魅力を見出すことを目指してきました。多くの人々の協力を得ながら調査を進め、その成果に基づく展覧会を、2020年3月6日から高岡市内の自治会所有の公民館および万葉社会福祉センターで開催する予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、展覧会と関連イベントである特別公開フォーラム「アートと地域の協働あるいは共犯」ともに、4月以降の新年度に延期することとしました。開催時期が決まり次第、改めて芸術文化学部のウェブページ等でご案内します。
展覧会は残念ながら延期となりましたが、これまでのプロジェクトの一部と3月6日に行われた成果報告会について紹介します。
(*今福隆太『クレオール主義』青土社、1991年より)

【2, 3】展覧会「地域/私のヴァナキュラーをめぐる旅」及び特別公開フォーラムのチラシ(ともに令和2年度に延期)。チラシ表面の展覧会タイトルのロゴと背景の地図は、加藤彩乃が担当。

2.街中での調査と公民館での展示企画
“私たちの生活している場所とはどのようなものか。あたり前にそこにあるがゆえに普段見落としていたり、目にしていても通り過ぎてしまったりしている景観やイメージについて調査し、地域のアイデンティティと呼べるようなものを探求する。それとともに、そこで得られた知見をそれぞれのイメージにフィードバックできる機会とする。”(徳重道朗、2019年6月)

高岡市には、「高岡御車山祭」、「金屋町千本格子」、「山町筋土蔵造りのまちなみ」など、長い年月が育んだ歴史的遺産が多く存在しています。しかし、これらの観光資源だけではなく、私たちの暮らす日常的な空間の中にも、魅力ある文化的要素が多く存在しています。上記の徳重さんの言葉とともに始まった本プロジェクトでは、まち歩きを重ねながら、旧町名とその由来や歴史、狭い路地裏や街並み、レトロな街灯や看板、連なる屋根の形が作り出す景観などに着目し、地域ごとに育まれてきた独自の文化とその魅力を見出すことを目指してきました。
プロジェクトの後半では、調査を通じて出会った高岡市内の公民館と万葉社会福祉センターあわせて12箇所を拠点に、地域の皆さんから街の歴史や祭、人々の暮らしなどについて話を伺い、昔の写真や資料などをお借りして、地域の特性を踏まえた展示や公民館の要素を取り入れたインスタレーションの準備を進めてきました。

【4, 5】およそ月1回のペースで講座を開き、各自の調査結果を持ち寄り、共有しました。夏から秋にかけて、「二上地域」「高岡の歴史」「現在の景観」という観点から、3つのグループに分かれて調査を進めました。
【6】12月初旬、会場候補となる公民館を訪ねてまち歩きを行いました。
【7】会場の一つである利屋町公民館(利屋町)を皆で訪問しました。ふるい職人でもある館長さんがふるいやせいろ作りの仕事について話を聴かせてくださいました。展覧会では、「ふるう」という言葉に着想を得た、インスタレーション作品を展開する予定です。
【8】一番新町公民館(川原本町)では地域の伝統的な祭である母衣(ほろ)祭について話を伺いました。毎年5月10日に開催される川巴良諏訪神社の祭礼日には、各町内で母衣武者が飾られます。その貴重な装束の一部を見せていただきました。展覧会では母衣祭を中心に、近くを流れる千保川と、かつて市場として発展したこの地域との繋がりについても紹介したいと思います。
【9】[撮影:徳重道朗]一番新町公民館の母衣(ほろ)の一部を見せていただきました。母衣はパーツごとに、丁寧に木箱に収納されていました。
【10】[撮影:徳重道朗]鴨島公民館(鴨島町)の館長さんが、鴨島町にある教恩寺の石碑を案内してくださいました。この石碑の台座は、前田利長の墓所に設置された大型石灯籠と対をなすとされる灯籠の火袋部分だそうです。

3.3月6日に成果報告会を開催
展覧会は延期となりましたが、3月6日に大学で成果報告会を開催しました。これまでに調査した成果や、予定していた展示計画および作品について、メンバーで共有しました。

【11】2020年3月6日の成果報告会。12箇所をめぐる展覧会場の出発地点となる鉄砲町公民館(白金町)では、学生による高岡の風景の写真や絵画作品、地域の伝承に基づいて学生が制作する絵巻物、徳重さんによるインスタレーションなどを展示予定。
【12】[撮影:長津晴菜]鴨島公民館(鴨島町)から南町四区公民館(南幸町)、そして博労町まちかどサロン(博労町)へ歩いていく途中、鴨島町の町名の由来の1つである鴨島七郎の屋敷跡と推測されている石垣に出会います。展覧会では、博労校下の3つの会場を、石垣をたどって巡るコースを提案します。
【13】[撮影:長津晴菜]南町四区公民館(南幸町)の中庭。住居兼酒屋を改装してできたこの公民館は、婦人会の皆さんによって手入れされた中庭が見どころです。展覧会では、タイムラプス(低速度撮影)で記録された中庭の映像を上映します。また、酒店の倉庫に眠る道具類を展示予定。
【14】2020年3月6日の成果報告会。企画を担当した学生が、利屋町公民館(利屋町)でのふるいをモチーフとするインスタレーションについて説明。
【15】[撮影:早川綾音]利屋町で出会ったふるい職人さんからお借りした仕事道具です。丁寧に、大切に扱われてきた様子が伺えます。
【16】[撮影:徳重道朗]大坪町一丁目公民館(大坪町)の2Fからの眺め。
【17】大菅公民館(丸の内)での展示計画に関する打ち合わせの様子。担当学生達が館長さんや自治会の皆さんに展示プランを説明し、意見やアドバイスをいただきました。
【18】[作成:有原千尋]大菅公民館は、かつてここに暮らしていた大菅さんが、自宅を地域に寄付されたことで公民館となりました。昔ながらの町屋づくりの構造を活かし、地域住民が「家族」として集う一軒の「家」をイメージした展覧会を企画しました。スケッチは、担当学生が地域の皆さんと準備を進めていた「大菅家の昨日と今日、それから明日」と題するインスタレーションのプランです。

4.地域主催で開かれた展覧会「大坪町二丁目 歴史を語る集い」
芸術文化学部主催の展覧会は延期になりましたが、大坪町二丁目公民館(大坪町)では、すでに準備が進んでいたことから、館長さんと地域の皆さんの主導により、地域主催の展覧会が3月6日〜15日に開催されました。地域の皆さんから思い出深い暮らしの品々を集めて展示するとともに、かつて商店街として賑わっていた街の様子を、昭和期の写真や地図から思い起こすことのできる展示となりました。

【19】大坪町二丁目公民館の2Fでは、スライド映写機や旧型ラジオ、昔の秤(はかり)や大工道具など、地域の皆さんから持ち寄っていただいた様々な生活用具や仕事道具が展示されました。写真は、展示準備を進める館長さんと元自治会長さん。

5.展覧会「地域/私のヴァナキュラーをめぐる旅」に向けて
成果報告会の後、次の調査に取りかかる学生や展示プランを見直す学生など、展覧会に向けて新たな動きが始まっています。開催時期は未定ですが、今回のプロジェクトの成果をより良い形で発信できる展覧会をつくりたいと思います。12箇所の会場を巡りながら、高岡の街を散策していただき、私たちにもまだ捉えきれていない地域の魅力に触れていただく機会にしたいと思います。

【20】3月の報告会の後、二上山の麓にある二上射水神社のしめ縄づくりを取材させていただきました。二上地域では、担当学生達が、二上射水神社の左義長や川漁師さんの仕事、竹馬など地域の昔の遊びを取材しました。展覧会では、それらの映像を紹介するとともに、徳重さんと担当学生の作品を展示予定です。

[担当]
松田 愛(芸術文化学部 講師)

[関連リンク]
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