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2015.10.30

【受験生へのメッセージ】「歴史を学び、美術の可能性を考える」松田 愛

バラエティー溢れる芸術文化学部の教員が、受験生のみなさんに伝えたいこととは…。担当する授業の特色と研究の魅力、そして地域連携活動等をとおして見えてくる受験生へのメッセージ。

[教員]
松田 愛 まつだ・あい 講師

[担当コース]
芸術文化キュレーションコース

[専門分野]
西洋美術史、近現代美術論、アート・マネジメント

[研究テーマ]
「近現代美術史とアートマネジメント」

「教育の特色」
 「西洋美術史」では、美術の歴史と基礎知識を教えます。作品のテーマや内容、形態的特徴や使われている素材など、まずは作品をよく観察することから始めます。さらに制作意図や制作プロセス、どこでどのように鑑賞されたのか、西洋の時代背景や文化背景など様々な視点から美術作品の魅力を読み解いていきます。
 卒業論文では、近現代美術を中心に、美術作品の魅力や歴史的価値を考察する美術史研究や、近年盛んに行われている芸術祭と地域の関わり等を事例に、芸術の役割や可能性を考えるアート・マネジメントの研究を指導しています。どちらも作品や対象を実際に見て観察する力、文献を丁寧に読む力を養うことが基本となります。

「研究の特色」
 フランスの現代美術作家ソフィ・カルの作品について研究しています。美術館ではじめて彼女の作品と出会い、その詩的な世界に思わず息をのみました。あの感動は何か。それが知りたくて美術の研究を続けています。カルは他人を尾行したり、失恋の痛みを作品にしたりと、自身の個人的な体験から出発して、現実と虚構の織りなす独特な作品を生み出しています。一方で、他人との距離やコミュニケーションの不可能性、不在など根源的なテーマを追求しています。このような今日の美術作品が、私たちの社会や日常、そして生とどのように関わっているのか、1つ1つの作品や実践を丁寧に読み解き、研究しています。

「地域連携の特色」
 地域連携授業「社会における文化マネジメント」では、芸術文化キュレーションコースの2名の先生と共同で、高岡市や南砺市での学外フィールドワークを実施しています。風景学の奥先生と二上山調査を行い、日本・東洋美術史の三宮先生とは伏木の史跡や寺院をめぐりました。私の担当した南砺市井波の実習では、彫刻家の方のレクチャーを聴きながら、瑞泉寺や井波彫刻総合会館を見学しました。芸術文化が私達の実際の暮らしとどのように結びついているのか、またより良い関係をどのようにマネジメントしていくのかについて、五感を通して学ぶ貴重な機会となりました。

地域連携授業「社会における文化マネジメント」で井波を訪問しました。彫刻家南部白雲氏の講義とともに、瑞泉寺や八日町通り、南部白雲木彫刻工房を見学し、伝統文化とまちづくりが融合する様子を体感しました。

卒業研究で新潟県越後妻有の「大地の芸術祭」を現地調査し、空き家を活用した様々な展示を見学しました。写真はフランスの現代美術作家クロード・レヴェックの光と霧を使った作品《静寂あるいは喧騒の中で》。

プラハ美術工芸大学より画家のパトリック・ハビル氏をお招きし、「絵画の可能性」と題する特別講演を開催しました。街中で行われた路上絵画や、教会での抽象絵画の展示など実験的な創造活動がとても印象的でした。

「受験生へのメッセージ」
 美術作品を見ることは、私たちに何をもたらすのでしょうか。見えないものを見る力、隠された意図を読み解く力など、物事をよく見る訓練だと私は思います。それは想像力を働かせて、自分とは違う他人を理解することと似ています。異なる時代の異なる価値観を知り、知らない世界や別の見方、別の選択肢があるかもしれないと、開かれた可能性にじっくりと向き合うことの訓練です。それは想像力や物事に対する柔軟性を獲得する訓練かもしれません。
 最後に、絵画の秘密に迫る美術史研究の魅力が詰まった1冊として、フランスの美術史家ダニエル・アラスの『モナリザの秘密ー絵画をめぐる25章』(白水社、2007年)をお勧めします。

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