2016.04.14
【ニュース】「3千年前の中国安陽の土」で鋳型をつくり青銅を鋳造しました。/三船 温尚(芸術文化学部 教授)による古代鋳造技法の復原実験

三船 温尚(芸術文化学部 教授)による古代鋳造技法の復原実験
安陽(殷墟)の土で鋳型をつくり青銅を鋳造しました。世界の古代青銅器のなかで最も発達した中国古代鋳造技術を解明する研究です。この実験は、公益財団法人 平和中島財団 2015(平成27)年度 アジア地域重点学術研究助成『中国殷代青銅器の製作技法各種の学際的復原研究』の活動で、2016年3月15日~19日、富山大学高岡キャンパス(芸術文化学部の鋳造室)で行いました。

3千年前の中国殷墟周辺の2種類の土を富山大学に空輸し、安陽の土の収縮率を調べるために水練りした安陽土を木枠に詰め乾燥している写真。やはり、日本の伝統的な鋳型土の真土(まね)とは異なる質でした。一言で表現すれば、「不思議な土」、「天使のような悪魔のような二面性のある土」でした。この土をどのように使いこなしたのか、今後、解明していきたいと考えています。

安陽の土で模(原型)を完成させ、模に安陽土の外鋳型(明るい橙色部分)を作りはじめた写真。この後、外鋳型を模からはずして、安陽土鋳型の再現性(転写性)や強度を観察しました。写真の実験担当(模と鋳型製作)者は、岳占偉氏。

富山大学高岡キャンパスの鋳造室での実験風景。7種類の模や鋳型の製作実験と、1種類の熔解実験のほか、青銅器の3D計測データの検討会などを5日間で行いました。写真右奥が熔解実験。写真中央が、安陽土鋳型の分割後の状態。

でき上がった複数の安陽土鋳型を、重油炉内で800℃程度まで焼成した写真。赤味の強い焼成色になりました。耐火度が優れています。

焼成した鋳型を鋳造室に並べて、熔かした青銅を順番に流し込んでいます。道具が当時と異なっても、3千年前の工人も同じ青銅の輝きを目にして作業をしたはずです。

古代の熔解再現実験の写真。定説となっている『周礼考工記』の銅・錫配合比とは異なる仮説をたてておこなった基礎実験が成功し、さらに研究を進める予定です。この実験担当者は、飯塚義之氏。作業者は富山大学の学生。
3千年前の中国古代青銅器の鋳造技術は、今も復原できていません。多くの研究者が長年研究しても、どういう方法で精緻な文様を鋳造したのか、複雑な形を鋳造したのか、未だ謎のままです。今の技術よりも、3千年前のほうがはるかに高かったから、今の研究者には解明できないのではないでしょうか。これは、古代人のほうが器用だったという手先の問題ではなく、彼らの叡智がわれわれの想像をはるかに超えた域にあったから、分からないのではないかと推測しています。
古代人の知恵とは、具体的にどういうものだったのか。当時、実際に使ったのであろう安陽土で鋳造実験することは、技法を検証するうえで極めて重要な方法です。当時と同じ安陽の土で鋳型を作り、青銅を流し込み、実験結果を注視し、固定観念に囚われない想像力を働かせ、人類の青銅器の歴史における最大の謎を解き明かしたいと考えています。
そして、どのような古代社会の状況や需要が、工人たちの能力を高めたのか、興味は尽きません。
日本・中国・台湾の研究機関に所属する考古学者と鋳造技術者が実験を計画・実施し、鉱物や金属の材料科学者が実験成果物を科学分析するという国際的・学際的研究によって、ようやく長年の謎が解明できるのではと思えるようになってきました。
[共同研究者]
三船 温尚(富山大学 芸術文化学部)
内田 純子(中央研究院歴史語言研究所(台湾))
岳占偉(中国社会科学院考古研究所)
飯塚 義之(中央研究院地球科学研究所(台湾))
廣川 守(泉屋博古館(京都))
長柄 毅一(富山大学 芸術文化学部)
新郷 英弘(福岡県芦屋釜の里)
[研究協力者]
三宮 千佳(富山大学 芸術文化学部)
鈴木 舞(東京大学 東洋文化研究所)
金井 大志(原製作所)
森崎 拓磨(富山大学大学院芸術文化学研究科)
堀内 快(富山大学芸術文化学部)