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2026.02.26

【学生の日々】「GEIBUN 17」卒業・修了研究制作紹介 No.6

卒業・修了研究制作展「GEIBUN 17」に向けて、研究・制作を進めている学生にインタビューを行いました。それぞれの学生の取り組みをご覧ください。

《GEIBUN 17 卒業・修了研究制作紹介No.6》
大学院人文社会芸術総合研究科 松原 奈美

Q1、どのようなテーマで取り組んでいますか?
テーマは「富山の薬売りになりたい!」です。その表現方法を模索する中で「変わり塗」と出会い、現在は『変わり塗百味行商箪笥』という作品の制作に取り組んでいます。
変わり塗は一種類の塗り方ではなく、多様な加飾技法の総称です。私は「先人たちが漆と向き合った結果から得られた漆に関する知見をかき集めて、漆でできることをとにかく全部やってみよう」というのが変わり塗だと考えています。
百味箪笥という形を選んだのは、富山の薬売りと変わり塗の伝播に共通点を見出したからです。薬売りが全国を回ることで文化が流れていったように、変わり塗もまた若狭から青森へと伝わっていきました。その物語を箪笥という形に込めています。
48個の引き出しそれぞれに異なる変わり塗を施すことで、漆でできる表現の幅広さを一目で伝えたいと考えています。

Q2、どうしてこのようなテーマにしましたか?
変わり塗に興味を持ったきっかけは、学部4年の時に出会った「ヒビ塗」でした。漆は乾くのに時間がかかる素材で、塗った後は触らないのがセオリーです。しかしヒビ塗では、漆が乾きかけの段階で取り出し、卵白をさっと塗ることで、わざとひび割れを起こします。牛乳でも同様のことができますが、割れ方に違いが出ます。そこに面白さを感じ、大学院で変わり塗を研究しようと決めました。
私が漆の魅力だと思っているのは、その自由さです。とにかく乾いて固まれば表現になります。一方で結構シビアな素材でもあり、きちんと管理しないと一生乾かなくなってしまうこともあります。そんな漆の世界に、先人たちが築き上げてくれた幅広い表現である変わり塗という技法があることを伝えたいと思い、研究テーマに選びました。
ただ、変わり塗は定義しづらく、伝えづらいものです。副論文において先人たちによる蓄積を整理しながら作品を作っていますが、やってみて思うのは「言葉じゃわからない」ということです。たとえば「ツノを立てる」という表現が使われているのですが、どこまで立てるのか。そういう感覚的なところは、実際にやってみないと分からないと痛感しています。

Q3、「変わり塗」の魅力について教えてください
変わり塗は種類がとても多いところが魅力です。
先行研究では98種類の変わり塗が11分類にまとめられています。これほど多くの技法が生まれた背景には、江戸時代中期に刀の鞘に変わり塗を施すことが大流行したことがあります。戦が減り、刀を振るう機会が少なくなったことで、武士たちは自分の刀を装飾するようになりました。誰とも被らないようにしたいという欲求が、技法の多様化を促したのです。武士自身が塗ることもあれば、「鞘塗師」という専門職が生まれるほどでした。
その魅力をどうしたら伝えられるか、というのが制作の出発点でした。

Q4、どのように制作を進めていますか?
この研究テーマを選んだ時、指導教員から「変わり塗をやろうとすると範囲が広すぎて2年じゃ終わらないよ」と言われました。先述の通り、先行研究では変わり塗が98種類、11分類にされていました。そこで、分類の中の1分類目「絞漆(しぼうるし)を基本とする技法」の13種類に焦点を当てることにしました。
絞漆は青森県弘前市でよく使われる技法なので、実地調査に行きました。博物館で500枚の津軽塗の手板を5時間かけて観察・撮影しました。江戸時代のものと明治のものが混在しており、今とは繊細さや表現方法がまったく違うことに気づきました。
変わり塗は模様により表現する場合が多いですが、絵を描くこともあります。絞漆は粘り気があるために高さを出すことが難しいため、絵を描くことは大変苦労するのですが、昔のものにはそういう繊細な作品も多くあります。色の組み合わせも、当時は色漆が5色くらいしかありませんでした。そういった制限の中でいろんな表現がなされていました。研いだ後に出てくる模様までコントロールしていた、先人たちの技術力に感動しました。
その感動したものを自分でどう作れるか、文献を読みながら検討、実験しています。例えば、鉛の粉を漆に混ぜる技法もありましたが、使用に対する制約もあり今の時代には合わないため、代わりに何が使えるのかを実験しています。
また土台の部分については、今回は乾漆技法を使わず木工技法だけで作っています。乾漆は自由な形ができる代わりにかなり手間がかかります。今回の目的は変わり塗の紹介なので、木工はシンプルな形であれば早くでき、厚みもすぐにつけられます。

Q5、作品を見た人に特に見てもらいたいこと、感じてもらいたいことはありますか?
変わり塗の多様な表現、色彩の豊かさを見てもらいたいです。「これ、漆なの!」と驚いてもらえたら嬉しいです。一般的に黒や赤が漆のイメージだと思いますが、実はこんなに色とりどりな表現ができることに気づいてほしいです。
また、なぜ箪笥の形にしたのか考察してもらえるとありがたいです。工芸は「匂わせ」の世界です。富山の薬売りが運んだ文化の香りを、作品を通じて感じ取っていただければ幸いです。

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