2026.02.26
【学生の日々】「GEIBUN 17」卒業・修了研究制作紹介 No.4
卒業・修了研究制作展「GEIBUN 17」に向けて、研究・制作を進めている学生にインタビューを行いました。それぞれの学生の取り組みをご覧ください。
《GEIBUN 17 卒業・修了研究制作紹介No.4》
工芸領域 渡辺 咲耶

Q1、テーマについて教えてください
私のテーマは、ものづくりの視点から見た茶道の魅力と、お茶が持つ未来的可能性の探究です。茶器の制作を通じて、茶道が生み出すコミュニケーションの力や、お茶の湯を日常生活により自然に取り入れるための方法を模索しています。
Q2、どうしてこのようなテーマにしましたか?
私は小学2年生から現在まで茶道を続けており、人生の半分以上を茶道とともに過ごしてきました。そのため茶道は、私にとってアイデンティティの一部ともいえる存在です。長く“使い手”として茶道具に触れてきたなかで、「この道具はどのような思いで作られているのか」と疑問を抱き、金属の街・高岡の鋳造所を訪れ、実際に制作を学びました。現場では、これまで気付かなかった道具ひとつひとつに込められた技術や心遣いが見えてきました。たとえば鉄瓶の持ち手が空洞になっているのは、熱伝導を抑えるための工夫であり、使い手を思いやる細やかな配慮です。
また、茶道は若い世代にとって敷居が高く、厳格なイメージが持たれており、そのために関心が薄れつつあります。その状況を少しでも変えたいという思いも、このテーマを選んだ理由のひとつです。

Q3、制作意図・ポイントについて教えてください
制作においては、現場に足を運んで学ぶことを大切にしています。実際に見て触れた経験をもとに、ものづくりに込められた思いや背景を丁寧に理解し、その内容を冊子としてまとめる予定です。
また、今回制作している茶器には、あえて注ぎ口を設けています。茶道は本来、一服ずつ点てていただく文化です。しかし、茶器自体を複数人でシェアできる形にすることで、後述する自然な対話が生まれると考えました。お茶を通してコミュニケーションが生まれる体験そのものを、創造しています。

Q4、制作の中で大変なことは?
鉄瓶づくりが特に大変でした。熱い現場で真っ黒になりながら重い道具を扱い、どろんこになって、やっと仕上げられるのが二つだけ。しかも、少しでも失敗すれば最初からやり直しです。工程の長さと難しさには本当に驚きました。しかし、その大変さの中で、畳の上では決して気づけなかったことをたくさん学ぶことができました。使い手として触れてきた道具が、どれほどの手間や時間、そして思いを経て生まれているのか。実際に自分の手で作りながら、それを肌で感じられたことは、非常に大きな経験であり、学びになりました。
一方で、誰もが気軽にお茶を楽しんでほしいという思いから制作をしていますが、どこまで革新として変えてよいのか、慎重に判断する必要があります。伝統を守るべき部分と、新しい形を取り入れてよい部分の境界を考えることは、制作における難しさのひとつです。

Q5、チェコ・プラハでの留学経験は制作に影響しましたか?
昨年、プラハへ交換留学した際に、制作した茶器の一部を持参し、実際にお茶を点てました。その場で喜んでくれる人がいることが本当に嬉しく、「自分が日本の文化を伝えている」という実感を強く得ました。
また、現地のティーハウスでは、誰もが気軽にお茶を楽しんでいる様子を目にしました。お茶が自然に対話を生み、コミュニケーションを円滑にする力を持っていることをそこで改めて感じました。こうしたお茶が持つ力は現代社会における国際対話にも通用するはずだと思い、お茶が持つ新たな可能性を実感するきっかけとなりました。
Q6、見た人に特に感じてもらいたいことは何ですか?
作品そのものだけでなく、鋳造所での学びや制作工程の記録、茶道の背景をまとめた冊子など、作品に至るまでの“プロセス”にも注目していただきたいと考えています。お茶は人と人をつなぐコミュニケーションの媒介であり、茶道は“おもてなしの芸術”です。その精神は国際対話にも通じる力を持っています。「お抹茶を飲んでみたい」「日常にも取り入れられそう」と感じてもらえれば嬉しく、茶道への興味を持つきっかけになればと思っています。

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