GEIBUN Selection

GEIBUN Selection は、卒業・修了研究制作展に出品された作品・論文の中から選出されたものです。
芸術文化学部の代表的な作品・論文として、今年度は下記の19点が選出されました。

「また逢う日まで」

飯野 那々子

絵画/キャンバス、油彩

他人と交流の中で共依存が生まれることがある。それは居心地の良さもあり一度陥ると簡単には抜け出せない。作品では、自分と他人の複雑に絡み合った心の在り様を表現した。多くの人が一度つながると離れがたくなる居心地の良さと裏腹に心の中で不信や焦燥を繰り返してしまう。人間特有のジレンマを抱えて地面から離れられない人物たちが上を目指すにつれて少しずつ成長していき、幸せになる道程を見出せるようにと願いを込めて制作したものである。

「swallow up」

氏原 栞

立体造形/銅、鎚起、緑青着色

わたしたち人間は、自分が楽に、快適に生きていくことのために便利なものを生み出し、それによって環境を汚してしまう。そんなことを考えている今この瞬間も、自然は強く、したたかに生きている。頼まれたり、求められたりしなくても。私たちの目に見えない小さな世界で美しく、力強く生きている。やがてそれが大きな力になり、恵まれているはずの私たちを脅かす。私たちはなんて弱い生き物なんだろうか。

「面と線」

鎌上 大輔

彫刻/石膏、サイザル、ペン、合成樹脂塗料、木材

立体物にデッサンを描くとどうなるのか。それがこの作品の始まりです。極端に言えば、面の集合体である立体の彫刻、線の集合体である平面の絵。この二つに違いはあるのか。立体である意味とは。線である意味とは。一つの作品に置いてこの二つが、それぞれを補い合い、違和感を持たせ、併存する。

「羊」

北野 美空

絵画(日本画)/和紙、岩絵の具、水干絵具、膠

制作するにあたり、羊の顔や耳等はリアルに体や背景は抽象的に描いた。羊の体の毛は、岩絵の具や水干絵具、金パール等を用いり盛り上げて描くことで、毛の重なりやうねりなどを立体的に表現した。背景は、ペインティングナイフでひっかいたような跡や岩絵の具や胡粉を厚く画面に乗せるなどをして、刷毛では出せない画面を作り出した。羊の毛や水玉模様には、うずまき模様のようなものが描写されている。岩絵の具を盛り上げて模様のように描くことで装飾的な画面にし、観る人を楽しませる、愛らしい羊の絵画にした。

「静謐を讃える」

外谷 柚季

絵画(日本画)/麻紙、岩絵具、水干絵具、銀箔、真鍮箔

工場などの産業景観は意図せずその造形美を称えられる。構造の複雑さや金属の質感が重く輝く様子が見る人を惹きつけると思い、それらを表現しようと制作に至った。構図を決める際は様々な場所や視点から工場をスケッチしたものを組み合わせて構成を練った。また、絵具だけでなく箔を用いることで金属の光沢感や重厚感を出すことにし、その上から何層にも絵具を重ねたり洗ったりして複雑な表情を描写した。

「to you」

酒井 日向

工芸/漆、麻布、和紙、針金、鮑貝、銀粉、金粉、砂糖

装身具の人を美しく見せるという役割に注目して制作した。自身が最も美しいと感じる自然の造形を取り入れ、漆のもつ艶や加飾方法を用いてその役割の実現を目指す。装身具は人が身につけることで一つの作品として成り立つ。自然の美しさを身につけることで得られる、外見や内面の変化を楽しんでほしい。

「呂色塗乾漆合子「大海をゆく」」

前田 詩織

工芸/乾漆、漆、麻布

大型の海洋生物が大海を泳ぐ力強さと、重量感のある体のしなやかな動きに魅力を感じ、シャチやサメなどを参考にして造形した。また漆器の魅力の一つである呂色仕上げの艶が活きるように、面の張りや稜線の動きに注意して制作した。

「杉の座具―杉材を用いた家具の制作―」 

今川 栞里

家具デザイン/杉

強度があり、傷がつきにくい広葉樹に比べて針葉樹は家具に不向きとされている。傷がついたって良いじゃないか。それ以上に杉には魅力的な特性がある。この作品は、欠点を補いつつ私が杉材を実際に加工して発見した魅力を「魅せる」ことに主眼を置いた。座面はほとんど手加工で削り出し、磨いた際に現れるつやのある美しい表情を活かした形状にした。台座は、強度面の弱さを解消するため部材に厚みを持たせ、接合部は強度のある組継ぎ加工を施した。

「日本の民謡と演歌を比較するデザインの研究」

八野 日香

比較デザイン/模型、パネル他8点

民謡は古くから伝わる日本の伝統音楽だが、現代において広くは知られていない。後継者不足の問題を抱えている民謡の特徴を知ってもらうために、近い存在の演歌と比較することを研究対象とした。それぞれの個性や特徴をわかりやすく伝えるべく、歴史から将来まで10のテーマで作品を制作した。時に印象が重なる民謡と演歌の違いを具体的に明確化することで民謡を理解し、興味を抱いて頂くことを目指した。それぞれの世界観を楽しんでもらいたい。

「五感を刺激する超小型モビリティ - EVE -」

林原 穂高/山田 香菜/吉田 陽菜/山上 桃

製品デザイン/ポリエステル布特殊加工、本革、アルミニウム(A5052)ガラスビーズブラスト加工・アルマイト処理、PETG、イタウバ、レッドシダー等

外装は、アルミ削り出しのフレームに3Dプリントのボディ。次世代の車づくりに挑戦し、制作できることを実証しました。これからはユーザー自ら愛車を自宅で制作する時代になることでしょう。この車でドライブし、富山の自然を五感で感じてほしいです。(林原穂高)

インテリアは椅子とダッシュボードを浮遊しているかのように見せることを意識して制作しました。この車の提供するドライブ体験は時間や場面によって変化します。それは時に力強く時に穏やかなものです。その体験をよりリアルに五感で感じていただけるよう環境に溶け込んでいるような空間を目指し二つの要素を浮遊させました。

また、ダッシュボードに装着できるフックには花瓶やカバン、額縁などをつけられることができます。自分の好きなものをこの車に取り入れることで、ライフスタイルにより色どりを与えることができれば嬉しいです。(山田香菜)

CMFはスタイリングだけでなく機能性を持たせること、素材そのものの美しさを活かすことを意識して制作しました。EVEの特徴的な外装ファブリックは、撥水・難燃加工、抗菌加工が施された2種類です。その日の気分やアクティビティに合わせて布を付け替えることができます。また、コーヒーかすから作ったレザーや、GBB加工・アルマイト処理をした美しいアルミフレーム、幻想的なダッシュボードの本革など、フェイクではない「本物の素材・質感」にこだわりました。(吉田陽菜)

UXUIは人とクルマとの共感覚(Synesthesia)を意識して制作しました。EVEの照明はすべてArduino で制御されており、行灯や生き物の呼吸を意識したパターン、人が近づくとクルマが気づいてライトをつけてくれるパターン、弦のタッチで調光ができる3つのパターンに分かれています。また、クルマのサイドには大きなハープが2つずつついています。前の小さいハープは実際に楽器として演奏できるだけでなく、弦での調光に使います。クルマを単なる道具としてではなく、自分のパートナーや心を通わせられる生き物として感じてほしいと思います。(山上桃)

「落語の英語の絵本」

守田 淳花

グラフィックデザイン、プロモーションデザイン、絵本

大人になって落語に触れる機会があってもその文化をスムーズに受容できるとは限らない。そこで、幼い頃から落語に慣れ親しむことが、その後の落語の興味・関心を引き出す土台になると考えた。そのため、親が子に積極的に与えたくなる英語の教材と落語の噺を組み合わせた。子供が英語の初歩を学ぶ多読教材として十分に機能しつつも、物語の端々に落語ならではのユーモア、昔の文化や価値観、愛すべき登場人物たちとその生活、芸能としての伝統や特徴をさりげなく散りばめてある。

「記憶する家」

亀山 文音

展覧会キュレーション/企画、編集、写真撮影

本来の役割を終えた町家は空き家となった。解体する話もあったというが、大切に手入れされてきたことで想いがつながり、今の所有者の手に渡った。そして「農庵」と名付けられ、家は生まれ変わろうとしている。そんな家が抱える記憶と、それをつなぐ人々の想いをキュレーションする。

「土着するくらしと循環のかたち -小屋×自然素材-」

杉田 茉優

建築再生/小屋の修復、竹小舞土壁、版築ブロックの試作、土、藁、竹

ひとは“手を動かしてつくる”ことで、土や藁、竹、石、さまざまな自然に触れ、自然と共存しながら暮らしの知恵を深めてきた。“つくる”ことが完全に細分化・分業化されてしまった今日、あらためて身近な自然素材から自らの手で暮らしをつくり直す必要がある。石川県輪島市三井町を舞台に、空き小屋を地域の素材で修復・改修し、里山の新たな暮らしの拠点をつくる。ひとつの小屋からはじまり、やがていたるところでみんなの手と地域の素材で“土着するくらし”が紡がれていく。

「「食と暮らし」再構築−伝統をいかした地域の交流のかたち」

林 紀歩

建築再生/模型、ドローイング

子どもの頃、祖母の家で過ごすことが多く、その中で食を通して地域の人たちと交流があったり、行事の時に作られる特別な料理から季節を感じていたのを思い出し、卒業制作のテーマを食にしました。私の制作が、かつては当たり前だった地域の人たちの交流について再認識し、今の時代にあったかたちで再構築されることのきっかけになればと思います。

「地域と共に育む学舎−新築・改築・減築により段階的に変化する小中一貫校の提案−」

森野 涼帆

建築意匠/図面、ドローイング、模型

現在、小学校の統廃合計画が進む魚津市を題材に、2023年から2053年までの30年間で段階的に変化する小中一貫校の設計を行う。新築・改築・減築の手法を用いることで拡張性を高め、人口動態の変化により変貌する教育需要に対応し、変化を続ける建築を提案する。30年のプロセスのなかで、学校としての機能だけではなく、コミュニティセンターなど地域住民のための機能も追加することで、学校と地域が共に育む学舎を設計する。

「Connective Design Methods~『繋がりのレシピ』を用いた設計手法の提案~」

北島 陽貴

建築意匠/設計参照カード、模型、図面、ドローイング、設計ワークフロー

「クラスター理論による芸術概念の説明」

巣守 美羽

人文科学系/美学/論文

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「伝統芸能の普及活動に関する考察 ―須磨琴保存会を例に―」

福嶋 純之

人文科学系/文化研究/論文

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「ネパールにおける組積造目地強化に関する研究- 反応物質の化学的性質検証-」

松本 和磨

自然応用化学系/建築構造/圧縮試験/土/岩塩/化学分析/論文

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