2022.12.12
【学生の日々】「GEIBUN14」卒業・修了研究制作紹介 No.4
卒業・修了研究制作展「GEIBUN14」に向けて、研究・制作を進めている学生にインタビューを行いました。それぞれの学生の取り組みをご覧ください。
《GEIBUN14 卒業・修了研究制作紹介No.4》
大学院芸術文化学研究科 浜谷 詠斗
Q1、卒業研究・制作のテーマを教えてください
【「親切」に集まり生きる −漁師兼業家族のコーポラティブコモンズを利他的有孔体としてつくる−】
建築自身が、住人や街に対して親切な振る舞いをするにはどうすればいいのかということを考えています。色んなことを閉じずに開いた「親切な建築」を作りたい。でも、プライバシーが無くなるなど開くことへのさまざまな問題もある。この2点を人間の身体と環境との間にある「服みたいな存在」で解決することを試みています。建物の内と外の境目に「服みたいな存在」を置くことで、コートを脱ぎ着するような調整機能にあたる場所をつくる。それが街全体のコミュニティへとつながる一つのきっかけになるんじゃないかと考えています。
Q2、このテーマを選んだきっかけを教えてください
今まで富山にしかいなくて、中高生の時に遊ぶところが無いなと思いながら生活していたのであんまり好きじゃなかったです。でも大学に入ってから、山のほうに行ったら農家の大きな家があったり、海の近くには漁師の家があったり、田舎的なところが残っているのっていいなって思いました。都会的なアクティビティを田舎的な良さの中に作り出したい。日々価値観が変わるような出来事や友達が毎日増えるような体験とか、お金に変えられない価値がある具体的な出会いがあればより豊かな場所になると考えています。やっぱ建築で新しいものを作りたい。イベントを企画してそれを成し遂げるんじゃなくて、人と人が直接関わる場所を作る建築の表現・プログラムでこれを達成しようって思いました。
Q3、研究・制作の過程で大変だったことはありますか?
副論文はかなり苦労しました。
あと、家と家の間のところにどんなプログラムを入れてどうやって運営していくかを考えるのが大変でした。
Q4、「親切な建築」で「服みたいな存在」はどのように活躍しますか?
M1の時に、庇の下を親切な空間、つまり「服みたいな存在」として捉えた円形の家を設計しました。円形なので建物を囲うように庇がついていて、その下には服をまとうように建物の内と外の境目になるところができます。庇の下は外だけど雨に濡れない、建物の敷地内なのでプライベートな空間の一部でもある。一方で住んでいる人の働きかけによっては、庇の下に人を招くことで地域にいるみんなの空間にすることもできる。建築に「服みたいな存在」が備わっていることで、人と人との関わりの中で利他的な行為が生まれるきっかけとなって、居心地がいいコミュニティができると考えています。
Q5、修了制作のキーワードになる「コーポラティブハウス」とは?
コーポラティブハウスは、複数の世帯で共同の土地に家を建てて暮らす、一軒家と集合住宅のいいところをとったみたいなシステムです。例えば4世帯で共同体を作って家を建てるとすると、4戸で1戸の家とか、2−2にするとか、アイデア次第で柔軟な土地の使い方をする、そういう組織を作って家を建てるみたいな。自分がやりたいのは、そこで生まれる家と家の間のところ、「服みたいな存在」にあたる公園みたいなところを、人と人の出会いの場に活用すること。服に対して身体の部分にあたる建物自体を思い切ったデザインにして、楽しい体験もできるし、親切に地域と繋がりながら生きていける空間を制作中です。
Q6、卒業制作展を見に来てくれる人たちに注目してほしいところはありますか?
模型や作図のクオリティはもちろん、論理的にも「たしかになあ」と思えるものを目指しています。建築ってちょっと気難しくてパスって思う人にも、模型を見て「形が面白いなあ」という入りから、建築ってもうちょっとみんなに読んでもらえないかなあって思う。
人と人が親切な関係を結べる建築、建築の表現が出会いの場にどんな親切ができるか、その辺に注目してみてほしいです。
皆様のご来場お待ちしています。
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《執筆者からの一言》
人が交わるしかけを作る。浜谷さんへの取材で私が新たに発見した建築の面白さです。この視点はきっと建築を学んでいる人からすれば当たり前なことだと思います。しかし私にとっては、建物そのものをデザインする印象があったので「はっ」としました。地域を含めた住む空間全体をデザインする建築の表現だからこそ、人に干渉しすぎないちょうどいい親切が生まれると思いました。
会場で模型や文章から「服」の空間はどこにありどんな場になっているのか、私だったらどんな場にするのか、探して考えてみるのが楽しみです。
[取材・写真・文・編集]
卒展キュレーター委員会(2022年12月12日)
執筆者:大学院芸術文化学研究科 浦 真斗花