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2026.01.20

【学生の日々】「GEIBUN 17」卒業・修了研究制作紹介 No.2

卒業・修了研究制作展「GEIBUN 17」に向けて、研究・制作を進めている学生にインタビューを行いました。それぞれの学生の取り組みをご覧ください。

《GEIBUN 17 卒業・修了研究制作紹介No.2》
キュレーション領域 小坂 綾音さん

Q1、テーマについて教えてください
「富山県の売薬版画の美術史的視点による研究」
売薬版画の表現技法から江戸後期〜明治初期の歴史的な背景と版画の役割について考察し、他県の版画との比較をつうじて関連性を探し出すなど、様々な視点から売薬版画の美術的な価値を探求する研究をしています。

Q2、このテーマを選んだ理由を教えてください
きっかけは自分が生まれ育った富山県の売薬業について研究したいと思ったからです。
中でも、県民だけど今までちゃんと知らなかった「売薬版画」に興味を持ち、今回のテーマとしています。
調査の過程でわかっている売薬版画の特性が3つあります。1つ目は売薬版画は色数が3色程度に限定されている例が多く、表現に制約があること。2つ目は、お得意先に配るおまけであり、売り物としての価値がないこと。そして3つ目の特性は、売薬版画は江戸時代の浮世絵が起源であること。
ここから読み取れることとして、売薬版画はそもそも美術作品としての役割を持っていなかったのでは?ということと、一部では「江戸の浮世絵の亜流」と言われることもあったため、美術作品として扱ってもその価値は劣ると考えられていたのではないかと考えています。実際に、美術作品としての先行研究もありません。
そのため今回の研究はあまり前例のない視点ですが、富山の生活に根ざした役割や表現の工夫など、売薬版画ならではの魅力を研究の過程で発見できればと考えています。

Q3、どのように研究を進めていますか?苦労した点などがあれば教えてください
研究では富山市の民俗民芸村にある売薬資料館を訪れ、所蔵されている資料から地方版画との比較を検証するなど、とにかく自分の目でひとつ一つ確かめながら研究しています。
また、集めた売薬版画に描かれている要素を見た上で、個々の売薬版画の時代背景や流行も探っています。例えば、役者が描かれた売薬版画では目の表現が特徴的だったため、同じ描き方をしている江戸の絵師を調べたり、絵師の師匠を辿り、照らし合わせることで歴史の痕跡を追いました。
売薬版画自体はたくさんありますが、1つの版画に対して深掘りするための手がかりが少ないです。そのため、自分の目で一つずつ比較したり、時代背景と照らし合わせたり、地道に、仮説を立てながら研究をしています。
苦労した点で言うと、先行研究が少なく手がかりがあまりないことですが、一方で自分で新しく仮説を生み出して研究できる点が楽しいです。

Q4、売薬版画の特徴や魅力は何ですか?
売薬版画の特徴は、その時々の時代背景や流行によって、異なる題材や表現をしていることです。描かれている内容をみると、都市部から地方に向けて、歌舞伎や役者などその当時の流行を伝える、娯楽的な役割が見出せるものがあったり、火事の多い地域には火の用心と書かれてあったり、生活に寄り添った1年のカレンダーになっているものもあったり、当時の暮らしに根ざしていた版画ということが読み取れ、そこに魅力を感じます。
また、興味深い点としては、売薬版画は売薬さんがお得意先の家におまけとして配っていたという経緯もあり、家族で安心して楽しめるように、芸者などの大人向けの題材はありません。売薬さんは各お客さんのお家事情に合わせてどんな「おまけ」を渡すのか考えながら渡していたと言えます。

Q5、論文を読む人に伝えたいことはありますか?
今回の論文は構図や代表的な絵師、複製の技術などの視点から売薬版画を見ていますが、自分の目で細かく検証していくことで得られる気づきはあります。なので、同じようにみなさんにも一度アリの目になって、自分の好きな作品を色々な角度から言語化してみてほしいです。言語化することで、作品の魅力を再発見できるきっかけにもなるので、今までなんとなく好きな作品、気になる作品があるという方は、ぜひ一度じっくり見てみてはいかがでしょうか。

Q6、最後に富山の方に向けて
売薬は富山の産業の原点で、小学生の頃も売薬さんの話を授業で聞いていました。
授業でも売薬さんは、日常的に古い薬を交換しに来る習慣があったと習いました。
富山県民にとっては馴染みがあるものの、ただ、売薬版画の存在は薄らいでいっている現状があります。私は朝日町出身ですが、地元富山で暮らしている私でも売薬版画のことは知らなかったので、これをきっかけに売薬版画の存在をもっと多くの方に知っていただきたいと思っています。


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